ドイツ生活

ドイツのロックダウン強化とクリスマスの行く末

ドイツは明日、2020年12月16日から再び厳しいロックダウンの日々が再開する。これまでも営業停止となっていた劇場やレストランだけでなく、小売店なども閉まることになり、接触制限など諸々のルールが更新された。来年1月10日までこの防疫措置は継続されるとのこと(参照:https://www.de.emb-japan.go.jp/itpr_ja/konsular_coronavirus131220.html


ドイツの各家庭では、今年のクリスマスをどう過ごすかが目下最大のテーマとなっている。日本人にとってのお正月に匹敵する大切な行事である。コロナだからといって中止されるべきではない!いや、家族や親戚に会うのはリスクが高いからやめよう!などなど、きっと家庭内でも異なる意見が飛び交っているのではないだろうか。


ロックダウン下では、置かれている状況は各人本当にさまざまだし、価値観の違いやその擦り寄せなど、気を遣うことが増える。自分にとっての常識がパートナーや友人の常識とは限らない。ドイツ政府の対策・方針が基準といえども、結局それぞれが注意深く行動するしかないし、他人へ思いやりは忘れてはいけないと思う。


ベルリンのアレクサンダー広場で数日前に撮ったこの写真、テレビ塔の先端が雲に覆われて地上の私たちには見えない。でも飛んでいる鳥たちはその向こう側を見ることができるんだよな〜と思ったら、立つ場所が違うだけで物の見方が変わるということに納得できるような気がした。

ドイツのフリマサイトに初出品 イーベイ・クライネアンツァイゲン

家具のひとつを手放すことになり、ドイツのフリーマーケットサイトイーベイ・クライネアンツァイゲン(eBay Kleineannzeigen)で売りに出すことにした。イーベイ(eBay)の姉妹サイトであるイーベイ・クライネアンツァイゲン(「小さな広告」と言う意味・以下イークラと勝手に略)は個人での売り買いができる、日本でいう『ヤフオク!』や『メルカリ』のようなプラットフォームだ。


使い方としては似たようなものだと思うが、『無料(Kostenlos)、簡単(Einfach)、ローカル(Lokal)』がキャッチフレーズのイークラは、商品を都市、地区単位で検索することが前提とされている。ここでは実に様々なものが扱われているが、家具や電化製品など、ちょっと大きめの中古品は送料も高くつくし、売り手も発送するのが手間なため『引き取りのみ対応可(Nur Abholung)』とされていることが多い。だから近場で商品を探し、現地へ出向いて実物を確認、購入する場合は直接そこで支払いを済ませて持ち帰る、という方法がかなり浸透している。


イークラを買い手として利用したことはあったものの、売り手として不用品を販売するのは初めて。結果からいうと、我が家の家具は販売開始から約24時間後、新たな所有者に引き取られていった。


初めてのイークラ出品ということで、見よう見まねで商品広告を作ったのだが、値段を入力するとイークラが『適正価格』を提案してきてくれた。どうやらイークラで取り扱われている同様の商品はもう少し高価格のよう。ということで最初の設定よりも少し値段を上げて登録することにした。フリマサイト初心者にとってこの機能はなかなかありがたい。
商品説明には商品の寸法、『引き取りのみ対応可』と記した。また、商品撮影のためにかなり時間を要したことも付け加えたい。モノ撮りは難しい。試行錯誤の末、購買意欲をそそる雰囲気の良いカタログ風の写真が撮れたとは思うが、もう少し慣れて手際よくできるようになりたい。


ありがたいことに多くの問い合わせがきた。しかし“早い者勝ち”のフリマ界、いちばん最初に連絡をくれた人が一番乗りで見学に来ることになった。約束の時間より45分遅れて到着した恰幅の良いご夫婦、奥さんの方が威勢良く「20ユーロ負けてよ」と言ったが、こちらも『適正価格』を学んだので、「それはできない」と応じる。しかし彼らの本国アフリカでは、こういう売り買いの場で値引きに応じないことはあり得ないという。こちらにとっては連絡もなしに45分遅刻してきて更に値切るなんてあり得ない。


問答の末、結局5ユーロ引きで取引は成立した。声高にやり取りをして喧嘩しているような会話になったが、最後はお互い笑顔でお別れ。商品をのせたワゴン車とご夫婦を爽やかな気持ちで見送り、ふとアフリカを旅し、市場の風を感じたような気になった。

ドイツ統一30年・ベルリンを走りながら目にしたデモ隊たちと町の様子

ドイツ統一から30年を迎えた2020年10月3日。ベルリンの自宅で迎えた土曜の朝は祝日らしく、穏やかに明るく差し込む太陽の光と共に始まった。最高気温が23℃になるというので、蚤の市にでも繰り出そうかと考えていたが、統一記念日なのだから壁が崩壊して東西ベルリンが再び一つになった象徴的な場所であるブランデンブルク門を目指そうじゃないか、ということになり、ミッテまで自転車を走らせることにした。

賑わうブランデンブルク門(正面)

コロナの影響で統一30周年を記念する式典などのイベントは中止となってしまったが、毎年この日に集結するデモ隊は今年もやはり健在のようで、いたるところで様々な主張をする人々に出くわした。長い列をなしてベルを鳴らしながらレイシズムに反対する自転車デモ隊、声を枯らして政府のコロナ対策を批判する団体とそれを囲む大勢の警察官たち、ミリタリー感満載の集団から聞こえてくるロシア訛りのドイツ語、クラブ文化を救えと練り歩く仮装した人々。。

デモ隊と警察で溢れる門の裏側
Deutsche Wiedervereinigung
アート作品
Deutsche Wiedervereinigung
国会議事堂の真横で待機するデモ隊

どのデモ隊にもそれぞれのカラーがあり、平和的な雰囲気を感じさせるものもあれば、物々しい監視のもとで激しく叫ぶものもあり、ブランデンブルク門から国会議事堂前までの道は警官隊と地元の人、観光客、そしてデモに拍手で賛同を示す人々でごった返していた。

国会議事堂と警官たち
Deutsche Wiedervereinigung
ワンコも参加
Deutsche Wiedervereinigung
国会議事堂 全体像

ちなみにこの国会議事堂、何度も前を通ってはいるが、未だ入ったことがない。見学するためには事前の申し込みが必要だ。一度は訪れてみたい。

Deutsche Wiedervereinigung
灰色の標識がベルリンの壁跡を示している

シュプレー川に沿って走っていると、遊覧船が航行中だった。観光客もかなり戻ってきているな、という印象。

Deutsche Wiedervereinigung
自由を主張する人たち
Deutsche Wiedervereinigung
ラブな旗
Deutsche Wiedervereinigung
警官とやりあうスーパーマン

デモで賑わうウンター・デン・リンデン通りを抜け、フランツォージッシェ・シュトラーセへ。ブティックやフランスの百貨店であるギャラリー・ラファイエットなどがある通りだ。コーミッシェ・オーパーやコンツェルトハウスもこの近く。ここがなんと車両の走行禁止になっていて驚いた。2021年1月末まで試験的に行われるらしく、歩行者と自転車のみが通行可能だ。道路の真ん中が自転車のために広々とマーキングされていて、自転車天国ここにあり、という感じ。

Deutsche Wiedervereinigung
Französische Straße

この後はシュターツ・オーパーことベルリン国立歌劇場を右手に見ながら、アレキサンダー広場を目指す。

Deutsche Wiedervereinigung
ベルリン国立歌劇場

安全運転を心がけながら、ベルリン大聖堂とテレビ塔をノーファインダーで撮影。そういえばこの風景、15年前に初めてベルリンを訪れた時にも撮った。ふたつのランドマークはこの先も変わらないだろう。

Deutsche Wiedervereinigung
ベルリン大聖堂とテレビ塔

アレキサンダー広場では東ドイツ時代を振り返る展示が行われていた。この垂れ幕はよくよく見ると手書きである。

Deutsche Wiedervereinigung
アレキサンダー広場
Deutsche Wiedervereinigung
アレキサンダー広場の世界時計とテレビ塔
Deutsche Wiedervereinigung
東ドイツを懐かしむ展示


実はここベルリンのミッテ地区、目下コロナウィルス感染者が急激に増えており、ドイツ国内の他州から「リスク地域」と指定されることになってしまった。州によってはベルリン・ミッテに旅行した人は検疫が義務付けられているが、ベルリンに住んでいる者としてはどうしようもない。状況が改善することを願うばかりだ。

廃村の秘密・ドイツに残る旧ソ連軍の基地跡「フォーゲルザング 」村に隠されたもの

ベルリンの隣の州を気ままに旅する予定だった週末、「旧ソ連の軍事基地跡地がある」と小耳に挟み、好奇心旺盛な我々は自転車で向かうことにした。ソ連軍が自国の外に秘密裏に基地を作っていた、それもベルリンからほど近いブランデンブルク州ツェーデニックに!「廃墟」と「ソ連軍が残したもの」という二つのキーワードに惹かれほとんど思いつきで目指したのだが、これがなかなかのアドベンチャーになった。「鳥の歌(フォーゲルザング Vogelsang)」というおとぎ話のような名前の土地の、森の奥深くにこの基地跡はある。

ここから先がフォーゲルザング
Vogelsang
森の中でベリーをつまみ食い


前日に宿泊していたオラニエンブルクからポピーの乱れ咲く原っぱを横目に幅広のサイクリング用の道を走り、グーグルマップのおおよその位置を頼りに森の中の基地を目指す。森に入ってからは舗装されていない砂だらけの道を自転車を押しながらえっちらおっちら歩き、途中ベリーを摘んで小腹を満たし、さまよいながらけもの道をつたい進むと、ソ連軍が置いていったような朽ちた軍用車の一部分、錆びたバケツやコップなどの日用道具が打ち棄てられている目的地らしきエリアに入った。

Vogelsang
ソ連軍の残骸?
vogelsang
動物の骨


いよいよ近づいてきた、と思ったら人影が。一人の男性が何か記念になるものをとでも思ったのか、廃棄されたものを物色して持ち帰ろうとしているところだった(後にも先にもこの人が村で出くわした唯一の人物となった)。その後、動物の骨が散乱する一帯を抜けしばらく行くと、それらしき柵が見えてきた。基地跡だ!

Vogelsang
柵は役目を果たしていない
Vogelsang
だだっ広い基地跡


後から知ったのだが、我々が入村した場所はフォーゲルザング駅から向かう道とは真逆の方向からで、基地の最後方に当たるところだったようだ。到着したは良いが見渡すばかり草原で、建物といえば壊れた監視塔のようなものが確認できるのみ。見取り図があるわけでもなく勘を頼りに動くしかないが、あいにく雨が降り始めた。こんな時のために準備していたポンチョを羽織り、木陰で雨宿り。するとそう遠くないところから、「パン、パンッ」という音が立て続けに聞こえてくるではないか。

Vogelsang
監視塔のようなもの


「も、もしかして銃声?!」森の奥深くに隠された旧ソ連軍の跡地である。マフィアによる取引など犯罪の温床になっていてもおかしくはない。まさにここでいま殺人を犯した極悪人に見つかったら我々も口封じのために殺されるんじゃないだろうか、こんなところに誰も助けになど来てくれない、ヘリコプターが救助に来る頃には時すでに遅しだろう、楽しいはずのサイクリングこんなはずじゃなかった、などと冷えた体に氷水がつたうがごとく思考がめぐり、さっきまでのワクワクなど嘘のように吹っ飛びテンション急下降、無言で震えるヒルシュトオンチーム。

Vogelsang
焼却炉?


だがしばらく息を潜めていると物音もしなくなり、幸い雨も上がって来たので「さっきのは多分、誰かが何かを壊していた音だろう」と解釈することにし(ポジティブ)、気を取り直して先へ進んだ。ここから先は以下の写真をご覧いただきたい。とにもかくにも360度、どこを見ても廃墟しかない。まさしくゴーストタウン、廃村の風景である。

Vogelsang
学校の校舎のよう
Vogelsang
廊下
Vogelsang
日焼けした肌のような壁
Vogelsang
入ってはいけない雰囲気
Vogelsang
廃屋にもグリーン
Vogelsang
大きな扉。きっと軍用の車などが出入りしてたのだろう
Vogelsang
倉庫風の建物にて
Vogelsang
遠巻きに見る
Vogelsang
ホーンテッドマンションさながら
Vogelsang
平屋の何か
Vogelsang
木が屋根をぶち破って生えている
Vogelsang
ガレージ?
Vogelsang
朽ちたお手洗い
Vogelsang
番犬がいたようだ


行き当たりばったりの探検は約2時間程で終了。暗くならないうちに退散しようということで、後ろ髪を引かれながらも草木が鬱蒼と茂る湿った森の中を今度は駅の方角に向かう。道が道として成り立っていない箇所も多く、倒れた木を自転車を担いでまたいだり、なかなかハードだ。

Vogelsang
駅へ続く道


しばらく歩くと線路が見え、タイミングよく一時間に一本のベルリン行きの電車に間に合った。北から到着した満員の車両に愛車を積み込み、50分ほど揺られながら帰路に着いた。ちなみに無人駅のフォーゲルザングでは、乗車したい人はホームに立ち電車に向かって手を振り運転手に気づいてもらわなければならない。今時かなりアナログである。

Vogelsang
フォーゲルザング 駅
Vogelsang
電車は必要な時にしか停車しません、とのこと

驚きの事実

さて、帰宅してからフォーゲルザング村について改めて調べたところ、1952年から森の中に建設された兵舎の町には、軍人とその家族を含む15,000もの人が住んでいたらしい。関係者以外の立ち入りは禁止されており、劇場、商店、オフィス、ジム、学校、医療施設があったという。上空からの写真を見ると、その規模の大きさに驚く(我々は一部の地域しか歩いていない)。そしてさらに驚愕すべきことに1959年の初めには、核ミサイルR-5ポベダ12基が装備されていたというのだ。ソビエト軍の記録によると、核ミサイルは1959年8月に撤去されたらしいが、ちょっと背筋が凍るような話だ。

Vogelsang
ロシア語の看板
Vogelsang
壊れた窓


1994年、ロシア軍の撤退にともない軍の町は部分的に取り壊され、以来現在まで廃墟のまま放置されている。所有主はブランデンブルク州となっているが安全は保証できないため、立ち入りは基本的に禁止とのこと。ただし現地は人が入れないようにはなっておらず、言ってみれば野放しの状態。一部には防犯カメラのようなものが設置されていたが、どの程度機能しているのか疑問だ。廃墟を訪れたい人は自己責任でどうぞご自由に、という来るもの拒まず的な匂いがするが、思いつきとはいえよくもまあ丸腰で行ったものである。


ゴーストタウン「フォーゲルザング 」村を訪れる人は後を絶たない様子だが、数年前に撮られた写真などと比べると基地内の建物は相当劣化が進んでいるようだ。また、木々が生い茂っているため立ち入り禁止の柵を立てる必要もないくらい、このまま自然に飲み込まれ同化していってしまうような気さえする。参考までに2012年のデア・シュピーゲル誌オンライン版の記事をば。リンク先のフォトギャラリーの一番最後に2009年に撮られた基地の空中写真がある。圧巻。

白昼の帝国・世界最高峰のテクノクラブ「Berghain(ベルクハイン)」に潜入 

テクノ音楽のメッカとしても知られるベルリン。この町のナイトシーンを代表するクラブ「Berghain(ベルクハイン)」の存在については、テクノに疎い私でも耳にすることがあった。とにかくすごいところらしい、まず入場できるかどうかすら分からない、数時間並んで待ったが追い返された、などなど。興味をそそられてはいたが、これまで足を伸ばす機会はなかった。どちらにしてもきっと、物見遊山で訪れる私のような人間はバウンサー(入り口に立つ用心棒)に入場を断られること必至だっただろう。

Berghain
Berghain (ベルクハイン)外観

東ドイツ時代に発電所だったこの建物がベルクハインである。テクノを心から愛してやまない人間のみ入ることを許された聖地だが、コロナ渦の今日なんと一般公開されることになった。クラブが通常営業できないため別のアプローチを狙ったのか、日中にミュージアムのごとく展覧会をおこなうというのだ。ナイトクラブがその姿を陽光にさらす・・・これはまたとないチャンス!ということで久しぶりに晴れた週末、フリードリヒスハイン地区を目指した。

Berghain
tamtam: eleven songs – halle am berghain

到着するとすでに長蛇の列。待つ間もひっきりなしに老若男女、多種多様な人々が最後尾に加わってくる。白髪をピンピンに角立てたサイケデリックなグラサン姿の老婦人など、奇抜なファッションセンスの人が目立つ。ここからすでに展覧会が始まっている感。40分くらい待っただろうか。ようやく入り口に立つことができ、日付と時刻、連絡先を記入してマスク着用でいよいよ入場だ。

Berghain
Berghain (ベルクハイン)内部

tamtam: eleven songs – halle am berghain」というタイトルのサウンドインスタレーション、足を踏み入れるや否や、その音空間に息を飲んだ。そびえ立つ白昼の帝国の、荘厳で圧倒的な存在感。そして無機質な音が突き抜けるように鳴り響く。金属製の扉が音に共鳴して震えている。

Berghain (ベルクハイン)内部
Berghain
Berghain (ベルクハイン)内部
Berghain
Berghain (ベルクハイン)内部

天井から光の漏れるホール内を歩き回ったり、立ち止まったり座ったりして音に耳を澄ます人々。その身体も共鳴しているようで、来場者もこのインスタレーションの一部と化している。

Berghain
Berghain (ベルクハイン)内部
Berghain
Berghain (ベルクハイン)内部
Berghain (ベルクハイン)内部

宇宙をつかさどる王の宮殿のような雰囲気。迷い込んだ者たちを見下ろし、あざ笑うかのような目が描かれている。ここで踊るのはどんな気持ちだろうか。時折静寂をはさみながら緩急をつけて流れる音の動きが、帝国の夜のシーンを想像させる。

Berghain (ベルクハイン)内部
Berghain
Berghain (ベルクハイン)内部
Berghain
Berghain (ベルクハイン)内部

展覧会という枠組みを超えた異世界を旅した夏の午後。この空間そのものを観て体感するのが当イベントの楽しみ方だろう。おそらくこんなレアなベルクハインの姿は今しか見られない。展覧会は2020年8月2日まで開催中。

Berghain 住所:Am Wriezener Bahnhof 10243 Berlin, Germany

Scroll to top