ベルリンにはタイがある。鯛ではない。タイだ。
その名もタイパーク。タイ公園という名のストリートフードマーケットで、本格的なタイフードとタイカルチャーを体験できる、ある種のテーマパークである。

ベルリンのタイへようこそ

私がこの、タイ本国の屋台が立ち並ぶ風景に限りなく近い(タイには行ったことがないがそう確信する)、そして異国への旅気分が味わえるのに言葉が通じて楽ちんなドイツ最大級のストリートフードマーケットの存在を知ったのは、かれこれ5年以上前。訪れるたびにその混沌とした雰囲気と、地べたに座って卓上コンロなどで調理をする人々の無秩序感、色鮮やかな屋台とタイフードの数々に圧倒されてきたが、コロナ渦を経た最近のタイパークは、少し様相を変えたもよう。

連なる屋台は健在だが…

実はこのタイパーク、4月から10月にかけて毎週末に開催される、地元民や観光客に大人気なマーケットだが、これまではかなりグレー、いわゆる『闇市』の側面を持っていた感がある。要するに『無許可営業』がまかり通っていて、一時は閉鎖されるという噂もあったくらいだ。それがパンデミックを機に(?)様変わり、屋台も整然と立ち並び、地べたで揚げ物をする人の姿は皆無というクリーンさ。さらに各店舗には店番号が付けられ、責任者の名前まで記載されている。そして、以前のように使い捨ての食器でサービスするのではなく、デポジット制の再利用可能な食器で提供している。これは驚いた。

みんな忙しそう

営業許可のおりた屋台だけが出店できるようになったと考えれば、以前よりも規模がいくらか縮小されたような気がするのも納得だ。環境に配慮するという取り組みも、タイパークの存続には必須だったのかもしれない。

屋台のメニュー

パッタイが食べたくて並んでみたが、前の男性が受け取っていたものが美味しそうだったので、すかさず「それ何ですか」と訊き中華パンケーキなるものを注文。女性が手際良く、予め用意されていたパンケーキを少量の油で焼いてくれ、私は取り分けように持ってきていたピクニック用のプラスチック皿を差し出す。マイ皿を持っていき、6ユーロ以上注文すると、50セントを割り引いてくれるというから良心的だ。ちなみに店側の食器を使う場合は2ユーロ上乗せだが、デポジットなので食器を返却すれば返金される。

中華パンケーキとベジまん、ゲソの串焼き

私のマイ皿はどうやら小さすぎたらしい。店の女性が「気をつけてね」と言って熱々を半分に折って載せてくださったが、それでもはみ出ている。しかしこの刻んだキャベツがたっぷり入った中華パンケーキ、想像以上の美味しさだった。もはやタイフードではない気がするけども、、

パッタイもゲット

タイ名物パッタイも運ばれてきたが、こちらもマイ皿が小さく、お店の人にこれ以上載せきれないと言われてしまったらしい。次回は深く大きなマイ皿を持参しようと心に誓う。

飲用水タンク

屋台の合間には飲用水タンクも設置されていて、マイボトルに汲み放題だ。至れり尽せりなサービス。以前は見かけなかったと思う。

カラフルなパラソルが並ぶ

お昼時より少し前に行ったおかげで、並ぶ時間もそれほどなく、ゆっくりできたが、午後はどこの屋台も長蛇の列だった。なお、テーブルや椅子は設置されていないため、ピクニック用のシートを芝生の上に広げ、遠足気分で食べるのがこのマーケットのスタイルだ。

さつまいもボール、揚げバナナ、ココナッツミルクで煮た餅米・マンゴー添え

デザートも忘れずゲット。さつまいもボールや揚げバナナは定番だが、今回初めて食べたココナッツミルクで甘く似た餅米にマンゴーを添えたもの(写真右端)がなかなか美味しかった。
大量の虫が載ったお皿を運んでいる人を見かけたが、あれはスナックなのだろうか。

大賑わい

ピクニックする人たちで所狭しとなる公園。
置き引きもいるらしいので貴重品から目を離さないよう注意すべし。

カードゲームをする人たち

タイの人々だろうか。一心不乱にゲームに興じる男女の姿もあちこちで見られる。中にはお金をかけている人たちも。また、寝転んでプロのマッサージ師から本格的なタイマッサージを施術されている人も何人もいて、本当にのびのびとしたこの空間は、基本的には以前と変わっていないことに少しほっとした。

タイパーク横の蚤の市

タイパークは、ベルリンのヴィルマースドルフ地区、プロイセンパークという公園で4月から10月までの季節限定(金〜日曜日のみ)で開かれており、入場は無料だ(タイパークはこのフードマーケットの名前であって、公園の名前ではない)。この公園横のFehrbelliner Platzでは週末にアンティークな蚤の市も開かれているので、ランチの前後に行けば楽しい時間が過ごせる。この夏、もう一度くらい行けたら良いなと思う。

タイパークはここです。

Thaipark (Preußenpark)
Brandenburgische Straße, 10707 Berlin
https://thaipark.de/


文と写真:萬谷衣里 Eri Mantani プロフィール