肉食について考える・ドイツの食肉工場で発生した新型コロナウィルスの集団感染は何を意味するのか?
ベルリンのとある輸入食品店で「WAGYU」と大きく書かれたパッケージに入ったステーキ肉が陳列されているのを発見、思わず駆け寄りここは和牛も扱うのか!とよくよく見たらスペイン産だった。ブランド名か何か知らないが、消費者を欺くような紛らわしい商品表示をしてはいけないと思う。
それはさておきドイツではいま、ノルトライン=ヴェストファーレン州(NWR)にある大手食肉工場で大規模な新型コロナウィルスのクラスター(集団感染)が起き問題になっている。ここでは約7千人が働くが、そのうち1029人の感染が既に確認され、工場は営業を停止した。また同工場周辺の地域ではロックダウンを余儀なくされ、学校や幼稚園も休校している(2020年6月20日現在)。
ヨーロッパ最大規模の同食肉工場では、一日に2万5千頭の豚が処理されており、その数は一年でおよそ900万頭にのぼるという。ちょっと目眩がしそうになる数字だ。
クラスターが食肉工場という閉ざされた場で起きたことで、工場で働くひとたち(その大部分が出稼ぎに来ている東欧出身者だ)の劣悪な労働条件や住環境も問題視され始めている。食肉工場を取材した某番組で、最低賃金スレスレの時給で陽が昇らないうちから10時間以上働き、狭い寮の一室を同僚たちとシェアしながら暮らす従業員たちの様子がカメラにおさめられたものを見たが、それは確かに衛生的と言えるものではなかった。しかし、そんな労働環境でも彼らが働かなければならない理由、彼らを働かせなければならない理由はなんだろう?
番組では『1kgの肉が5ユーロ以下で買えるという現状は、理にかなっているのか?』という議論も行われていた。確かに今日どこのスーパーでも肉は安く売られているが(BIOショップなど一部を除く)、それが『生き物』の値段だと思うとはたと立ち止まって考えてしまう。
誰かのお気に入りはあなたの特別になるかもしれない〜ドイツの音楽ラジオ番組 『クラシック-ポップ-エトセトラ』
ドイチュランドフンク(Deutschlandfunk)で毎週土曜日の朝に放送される『クラシック-ポップ-エトセトラ Klassik-Pop-et cetera 』というラジオ番組を紹介したい。これは週替わりで著名人たちがナビゲーターをつとめ、自身のお気に入りの音楽をセレクトし、それぞれの楽曲にまつわるエピソードを交えながら紹介していく番組だ。一つの音楽ジャンルに限定せず、毎回クラシックからポップ、ロック、ジャズなど、あらゆるジャンルを網羅しながらお話とともに進むのでとても面白い。
番組内で流れる楽曲は常に変化に富んでいて、クラシック音楽が苦手な人が聴いていても飽きないだろう。また、普段聴かないジャンルの音楽はどこから手をつけたらいいか分からない、という人にはナビゲーターが水先案内人をつとめてくれるに違いない。ナビゲーターが趣味の良いセレクトをしていたり、好みが被っていた場合、その人自身に興味が湧いてくる。彼らのお気に入りの音楽が、あなたの”特別”になるかもしれない。ドイツで活躍する著名人、文化人たちを知る機会にもなるし、ドイツ語のリスニング訓練にもなるので私はほぼ毎週欠かさず聴いている。
同番組はインターネット上でも聴けるので、日本にいる人もアクセスできるはず(上記リンク先のページ上部にLIVEと書かれた再生ボタンがある)。ドイツ時間で土曜日朝10時5分開始なので、サマータイムの現在、日本時間では土曜日の17時5分開始だ。聴き逃した人は番組アーカイブをチェック。では良い週末を。
アメリカ個人旅行の罠・ESTA(エスタ)を申請し忘れ、搭乗手続き締切1分前に認証取得した話
2018年秋のことだ。その日私はベルリン・テーゲル空港のチェックインカウンター前に立ち、少し早めに空港に到着できたことに満足しながら定刻通りに出発予定のシカゴ行き飛行機への搭乗手続きを行おうとしていた。普段よく利用する航空会社だったので、勝手を知った顔をして搭乗券を発行してもらおうとしていた私に、係員の男性が尋ねた。
「ハーヴェンジー ESTA?(エスタはお持ちですか?)」
「・・・ヴァスイスダス?(それなんですか?)」
聞いたことがない単語にキョトンとする私に係員の言葉が追い打ちをかける。
「あなた、ESTAを持っていないなら飛べませんよ」
なんでもアメリカをビザなし観光する際にはESTAという電子渡航認証システム(Electronic System for Travel Authorization: エスタ)の申請が義務化されており、それが認証されていないことには搭乗手続きは行えないという。寝耳に水とはまさにこのことで、みるみるうちに血の気が引いていくのがわかった。「とりあえずここに行って訊いてみてください」と親切な係員がメモをくれたので、空港内の別のカウンターへ全速力で駆け息急き切って尋ねるも、そのような手続きサービスは行っていないとのこと。
仕方なくまた全速力で戻りもう一度同じ係員に助けを求めると、エスタはインターネット上で申請できるとのこと。搭乗手続き時間中に認証されるかどうかは分かりかねるがトライしてみては、と言われる。通常は出発の72時間前までには申請を済ましておかなければならないそうだ。
この時点で動悸がかなり激しくなっているが、とにかく情報を、とスマホでエスタのサイトを開き、日本語のページを速読。これならできるかもしれない!と手続きを始めようとした。が、入力項目が多い上、パスポートの証明写真部分のデータアップロードも必要なためスマホ一台では遅々として進みそうにない。「とにかくやってみるから、ちょっとこのスペース使わせてください」とお願いし、キャリーケースからラップトップを取り出し、チェックインカウンターの一角で立ったまま作業を始めた。必死の形相でキーをタッチし続ける私の横を、搭乗券を手にした旅行客たちが談笑しながら次々と通り過ぎる。それを横目に見ながら『この列に加らねば!』と、全神経を指先に集中させ、『必ず間に合う』と心の中で呪文を唱えながらひたすら申請の手続きをすすめる。
スマホで撮ったパスポートの画像データをラップトップに転送し、ファイルをアップロード。申請費用14ドルを支払うためのクレジットカード番号を入力しようとしたところで、係のお姉さんが近寄ってきて
「ヴィア シュリーセン イン フュンフ ミヌーテン(あと5分でチェックインは締め切ります)」
と言うではないか。万事休す。いや、もうすぐ手続きが完了するのであとは認証メールがくるのを待つだけだ。手続き完了。しかし認証までに最大48時間かかると書いてある。ここまで辿り着けたのに、認証まで2日かかるのか?!もはや望みは絶たれた。。待つこと約2分。
諦めかけた瞬間、スマホがブルルと震え、新着メールを知らせた。ESTAからの『渡航許可通知』だった。
「イッヒ ハーベ アイネ ベステーティグング べコメン!!!ベステーティグング べコメン!!!!!!(通知が来た、の意)」
二度叫んだと思う。カウンターを閉めようとしていた係員たちが振り向いて『おお』という表情をしている。興奮しながら通知メールを見せると即対応してくれ、チェックイン締切1分前にして私は無事シカゴ行きの搭乗券を手にすることができたのだった。
こんな時限爆弾処理班の様な仕事をしたことがかつてあっただろうか。危機一髪、寿命も相当縮んだと思う。思い出してもあぶら汗が出る。どうにかこうにか20年ぶりにアメリカの地に足を踏み入れることができたが、空港まで迎えに来てくれたマルコ(日本人・仮名)に開口一番問いただしたのは言うまでもない。「なんで教えてくれへんかったん?」「あーエスタか。ごめん、忘れてたわ」。
旅慣れているから大丈夫だろう、と両者とも過信していたせいで、渡航に関してなんの情報収集・交換もしないままだったのは反省すべきところだ。せっかくのシカゴ滞在が水の泡になるところだった。個人旅行の怖すぎる罠。
リンダ・マッカートニーが撮るポールとその家族『ザ・ポラロイド・ダイアリー』展
美術館も長い休館が明けたので、C/O Berlinで開催中のリンダ・マッカートニーによる写真展『ザ・ポラロイド・ダイアリー』へ足を運んだ。リンダは主にミュージシャンを撮影した写真家として知られるが、初耳な人も名前からピンとくるように、ポール・マッカートニー(ビートルズ)の奥さんである。
この写真展は、主にリンダ・マッカートニー(1941-1998)がポールと3人の子どもたちと過ごした1970年代に撮った、250枚を超えるポラロイド写真から成る。その多くはいわゆる家族写真だが、写っている人物がなにしろポール・マッカートニーなので、どれもこれもアーティスティックでかっこいい。中には大きく引き伸ばされた写真も展示されているが、ほとんどはオリジナルサイズのポラロイド写真がそのまま額に入れられているためとても小さい。その一つずつを、著名人のプライベートをちょっと覗き見するような感覚でゆっくり見てまわる(館内は撮影禁止だったため、C/O Berlinが発行している新聞の紙面から↓)。

日常の微笑ましいひとコマから休暇中であろう草原の風景まで、愛に溢れた瞬間の切り取り方が印象的。ビートルズは好きだが熱狂的なポールのファンというわけではないので、適度な距離感を保ちながら鑑賞したが、これが超のつくファンだったりするとジェラシーがめらめらと湧くのではないかと思う。彼らが結婚した当時はリンダに対するポールの女性ファンからの攻撃がひどかったらしいので、こんな写真展はまさかできなかっただろう。また、ローリング・ストーンズやジミ・ヘンドリックス、サイモン&ガーファンクルなどを撮影していた写真家なので、そういうミュージシャンたちの写真を観られると思って行くと、その数の少なさにがっかりするかもしれない。でも『ダイアリー』というタイトルに沿った内容なのは確か。

会場ではフランチェスカ・ウッドマンという夭折した写真家と、ソフィー・トゥンという現在活躍する若手写真家の作品展も同時開催中。三人の女性フォトグラファーのそれぞれの世界観を堪能した一日だった。会期は2020年9月5日まで。

ドイツの国境制限解除と新型コロナ接触追跡アプリの開始
国境封鎖が解かれた昨日、ドイツ国内の空港は他国へ飛び立つ人々で大賑わいだったようだ。空港の警察が殺到する問い合わせの対応に追われる様子や、ドイツ人の休暇先ランキングトップを誇るスペインのマヨルカ島で、現地のホテル従業員たちが(お得意様である)ドイツからの旅行者を拍手で出迎える光景などが報道されていた。インタビューを受けたドイツ人旅行者は、コロナはもううんざりだと言わんばかりで、やっとこさ訪れたバケーションを味わえる喜びを心底噛み締めているようだった。
渡航に関しては各国の対応が異なる上、まだ諸々の措置や条件があるため手放しでは喜べないが、一連の制限が解除されちょっと一息ついた印象がある。なお、日本からのドイツへの入国・帰国に関しては6月16日現在、隔離措置は行われていないとのこと(感染リスクが低くなったということらしい)。ドイツへの入国・帰国者への14日間の隔離措置が課される対象国リストは、ロベルト・コッホ研究所のサイト上で確認できる。
また、ドイツでは本日新型コロナ接触追跡用の『コロナ警告アプリ(Corona-Warn-App )』が解禁された。かねてより開発されていた話題のアプリが遂にダウンロード可能となり、ニュースでも取り沙汰されている。一体どういう風に使われるのだろう。コロナ感染者と1,5メートル以内の接触があった場合、あとから通知がくるそうだが・・・。私はまだインストールしていないが、少し様子を見てみようかと思う。
