美術館も長い休館が明けたので、C/O Berlinで開催中のリンダ・マッカートニーによる写真展『ザ・ポラロイド・ダイアリー』へ足を運んだ。リンダは主にミュージシャンを撮影した写真家として知られるが、初耳な人も名前からピンとくるように、ポール・マッカートニー(ビートルズ)の奥さんである。

この写真展は、主にリンダ・マッカートニー(1941-1998)がポールと3人の子どもたちと過ごした1970年代に撮った、250枚を超えるポラロイド写真から成る。その多くはいわゆる家族写真だが、写っている人物がなにしろポール・マッカートニーなので、どれもこれもアーティスティックでかっこいい。中には大きく引き伸ばされた写真も展示されているが、ほとんどはオリジナルサイズのポラロイド写真がそのまま額に入れられているためとても小さい。その一つずつを、著名人のプライベートをちょっと覗き見するような感覚でゆっくり見てまわる(館内は撮影禁止だったため、C/O Berlinが発行している新聞の紙面から↓)。

Linda McCartney The Polaroid Diaries
Linda McCartney “The Polaroid Diaries”

日常の微笑ましいひとコマから休暇中であろう草原の風景まで、愛に溢れた瞬間の切り取り方が印象的。ビートルズは好きだが熱狂的なポールのファンというわけではないので、適度な距離感を保ちながら鑑賞したが、これが超のつくファンだったりするとジェラシーがめらめらと湧くのではないかと思う。彼らが結婚した当時はリンダに対するポールの女性ファンからの攻撃がひどかったらしいので、こんな写真展はまさかできなかっただろう。また、ローリング・ストーンズやジミ・ヘンドリックス、サイモン&ガーファンクルなどを撮影していた写真家なので、そういうミュージシャンたちの写真を観られると思って行くと、その数の少なさにがっかりするかもしれない。でも『ダイアリー』というタイトルに沿った内容なのは確か。

昼寝するひと

会場ではフランチェスカ・ウッドマンという夭折した写真家と、ソフィー・トゥンという現在活躍する若手写真家の作品展も同時開催中。三人の女性フォトグラファーのそれぞれの世界観を堪能した一日だった。会期は2020年9月5日まで。

C/O Berlin
C/O Berlin


文と写真:萬谷衣里 Eri Mantani プロフィール