コロナ時代のドイツ

マスク義務化の効果はいかに・ベルリンでは違反者に罰金が科されることが決定

公共交通機関の利用や屋内での買い物の際にマスク着用が義務付けられるようになってからしばらく経つ。ベルリン市内でもいたるところでマスクが売られ、品薄だった頃が嘘のよう。デパートなどではお洒落な生地を使ったマスクが並び、ファッション小物的な位置付けだろうか、けっこうなお値段がしている。

薬局で買えるマスクは一枚1,5ユーロだ。再利用できるのか尋ねると、「110℃のオーブンで15分間焼いてください」とのこと。布マスクでなくてもリサイクルできるということらしい。

公共の場ではほとんどの人がマスクやそれに代わるもので口と鼻を覆い、ソーシャルディスタンスを出来るだけ保って行動しているが、中には全くお構いなしの様子で電車に乗る人もいたりする。そんな不届き者には今週の土曜日(6月27日)から50〜500ユーロの罰金が課されることが決まった。コントロールは警察によって行われるとのこと(Berliner Zeitung紙参照)。鞄の中にはいつも予備のマスクを忍ばせておかないといけないな。


つい数ヶ月前まではマスクなんて、と鼻で笑う人ばかりだったドイツで全てがひっくり返っている。土曜日からは接触制限も解かれ、人数に関係なく自由に人と会うことが可能になるが、緩まっていく諸々の制限に対し、厳格化が進むマスク着用義務と罰則の効果は期待できるだろうか。

コロナ禍での『フェット・ドゥ・ラ・ムジーク(音楽の祭日)』が過ぎて思うこと

6月21日は父の日だったが、『フェット・ドゥ・ラ・ムジーク Fête de la Musique』の日でもあった。1982年にフランスで誕生したフェット・ドゥ・ラ・ムジークは、夏至である6月21日に開催される。この日はみんな自由に音楽を演奏したり聴いたりして盛り上がろう!と同時多発的に世界各国、場所や形態を問わずライブコンサートが催される日だ。日本でも『音楽の祭日』として行われているが、今年はどこもオンラインでの開催にシフトしたようで、ベルリンでも同様だった。


天気の良い日曜日だったこの日、オンラインでの音楽祭とは一体どんなものだろうかと思い、ベルリンのフェット・ドゥ・ラ・ムジークのサイトにアクセスしてみた。ちょうどいくつかのコンサートがライブ配信されており、無観客の会場(屋外はもとより、図書館や自宅のリビング、果てはバスルームまで!)で演奏するアーティストたちの姿が映し出された。音質も悪くなく、束の間の気分転換に聴かせてもらうにはぴったりだった。


ただやはり、音楽祭という『お祭り』がこういう形で行われるのは残念に思う。私自身、同じくオンライン開催が決まったベルリンの某アートフェスティバルへの参加を、今年は見送ることにした。毎年楽しみにしていたイベントだったが、共同企画者である友人と相談したところ二人とも同じ考えで、この選択は私たちにとって正解だったと思う。


飛行機が再び飛び始め、狭い機内にマスクをした乗客がすし詰めになって座る一方で、コンサート会場は未だ休業を強いられている。動画配信をするオーケストラやアーティストたちも存在するが、インターネットを介さず本来の姿での公演へ向けてひたすら練習に精を出す音楽家も多いはずだ。無数の動画が溢れるオンラインの世界に参入することに躊躇する人もいるだろう。情報と技術には事欠かない現在、『表現』の方法もそれぞれに合ったものを選ばなければ自滅してしまう危険があるように思う。そんなことを音楽の祭日に考えた。

肉食について考える・ドイツの食肉工場で発生した新型コロナウィルスの集団感染は何を意味するのか?

ベルリンのとある輸入食品店で「WAGYU」と大きく書かれたパッケージに入ったステーキ肉が陳列されているのを発見、思わず駆け寄りここは和牛も扱うのか!とよくよく見たらスペイン産だった。ブランド名か何か知らないが、消費者を欺くような紛らわしい商品表示をしてはいけないと思う。


それはさておきドイツではいま、ノルトライン=ヴェストファーレン州(NWR)にある大手食肉工場で大規模な新型コロナウィルスのクラスター(集団感染)が起き問題になっている。ここでは約7千人が働くが、そのうち1029人の感染が既に確認され、工場は営業を停止した。また同工場周辺の地域ではロックダウンを余儀なくされ、学校や幼稚園も休校している(2020年6月20日現在)。


ヨーロッパ最大規模の同食肉工場では、一日に2万5千頭の豚が処理されており、その数は一年でおよそ900万頭にのぼるという。ちょっと目眩がしそうになる数字だ。


クラスターが食肉工場という閉ざされた場で起きたことで、工場で働くひとたち(その大部分が出稼ぎに来ている東欧出身者だ)の劣悪な労働条件や住環境も問題視され始めている。食肉工場を取材した某番組で、最低賃金スレスレの時給で陽が昇らないうちから10時間以上働き、狭い寮の一室を同僚たちとシェアしながら暮らす従業員たちの様子がカメラにおさめられたものを見たが、それは確かに衛生的と言えるものではなかった。しかし、そんな労働環境でも彼らが働かなければならない理由、彼らを働かせなければならない理由はなんだろう?


番組では『1kgの肉が5ユーロ以下で買えるという現状は、理にかなっているのか?』という議論も行われていた。確かに今日どこのスーパーでも肉は安く売られているが(BIOショップなど一部を除く)、それが『生き物』の値段だと思うとはたと立ち止まって考えてしまう。

ドイツの国境制限解除と新型コロナ接触追跡アプリの開始

国境封鎖が解かれた昨日、ドイツ国内の空港は他国へ飛び立つ人々で大賑わいだったようだ。空港の警察が殺到する問い合わせの対応に追われる様子や、ドイツ人の休暇先ランキングトップを誇るスペインのマヨルカ島で、現地のホテル従業員たちが(お得意様である)ドイツからの旅行者を拍手で出迎える光景などが報道されていた。インタビューを受けたドイツ人旅行者は、コロナはもううんざりだと言わんばかりで、やっとこさ訪れたバケーションを味わえる喜びを心底噛み締めているようだった。


渡航に関しては各国の対応が異なる上、まだ諸々の措置や条件があるため手放しでは喜べないが、一連の制限が解除されちょっと一息ついた印象がある。なお、日本からのドイツへの入国・帰国に関しては6月16日現在、隔離措置は行われていないとのこと(感染リスクが低くなったということらしい)。ドイツへの入国・帰国者への14日間の隔離措置が課される対象国リストは、ロベルト・コッホ研究所のサイト上で確認できる。


また、ドイツでは本日新型コロナ接触追跡用の『コロナ警告アプリ(Corona-Warn-App )』が解禁された。かねてより開発されていた話題のアプリが遂にダウンロード可能となり、ニュースでも取り沙汰されている。一体どういう風に使われるのだろう。コロナ感染者と1,5メートル以内の接触があった場合、あとから通知がくるそうだが・・・。私はまだインストールしていないが、少し様子を見てみようかと思う。

ベルリンの壁・取り壊し開始30周年記念の展覧会『ヨーロッパの国境の価値-壁崩壊からコロナまで』が開催中

東西ベルリンを分けた『ベルリンの壁』が崩壊したのは今から31年前の1989年11月9日。今年2020年6月13日にはその壁の取り壊し作業開始からちょうど30周年を迎えた。それを記念して、同日よりベルリンの壁記念館(Gedenkstätte Berliner Mauer)で展覧会が開かれている。

ベルナウアー通り
Berliner Mauer Ausstellung
『ヨーロッパの国境の価値-壁崩壊からコロナまで』展覧会


『ヨーロッパの国境の価値-壁崩壊からコロナまで』と名付けられた展覧会は、ベルナウアー通りからアッカー通り沿いにある壁の跡地内の屋外展示として、国境設備跡の手前に設置されている。展示場近くの壁跡には赤と白のトララインテープが貼られていて、パッと見はロックダウン後にあちこちで見られた立ち入り禁止になった公園のよう。展示パネルにも同様の装飾がされていて目を引く。

Berliner Mauer Ausstellung
国境設備跡の手前に設置された展示

展示は壁の取り壊しが始まった当時から今年3月以降のヨーロッパの国境封鎖の光景まで、人々を隔てるものとしての『国境』を改めて意識させる内容。ロックダウン以降、約3ヶ月間封鎖されていたヨーロッパの国境は明日(2020年6月15日)開く予定だが、ベルリンの壁は28年間も存在していたのだ。
この跡地にはなんども訪れているが、来るたびに当時の灰色の景色が見に浮かぶ気がする。屋外展示だけでなく記念館の内部も入場無料なので、観光に訪れた方には少しの時間を作ってでもぜひ観に来てほしい。

世界初・独フライブルク音大ピアノ科、自動演奏ピアノを駆使し遠隔リアルタイム入試を行う

一つ前の記事でドイツの音大の一部がコロナ危機に伴いオンライン入試(録画での実技審査)を行うと書いた(ドイツの音楽大学 2020年夏ゼメスター実施予定の入学試験を延期・オンライン審査に変更、または中止)。しかし、このビデオ審査という比較的「想定内」の方法の斜め上を行くヒットを飛ばしたのがフライブルク音大。なんと自動演奏ピアノを大学構内に設置し、はるか海の向こうにいる中国・日本の受験生たちの演奏を遠隔操作で再生し審査したというのだ。


以下、2020年6月10日付の Badische Zeitung 紙より抜粋 :


フライブルクの音楽大学で、初めてディスクラヴィアでの入学試験が行われた。日本と中国からの志願者はピアノ科の試験に臨んだが、特異点は受験者がアジアに滞在できることだった。審査委員会はフライブルクで特別なグランドピアノ(遠隔操作され上海と東京にいる受験生の演奏が再生できる)の前に座っていた。よって受験生は(アジアにいながらにして)フライブルクでリアルタイムで演奏することができ、フライブルクの現地受験生と同じチャンスを得ることができた。


これはヤマハのディスクラヴィア(Disklavier)という自動演奏ピアノが可能にしたもので、このテクノロジーを搭載したピアノはピアニストの演奏を非常に正確に録音し、また再生することができる。キーの動きが保存されたデータはインターネット経由で送信されるので、ピアニストが一台のディスクラヴィアを演奏し、別の場所で数ミリ秒の遅延で別のディスクラヴィアを制御する(再生させる)ことが可能。


フライブルク音楽大学はこのテクノロジーを15年間使用しており、教育と研究におけるディスクラヴィアの使用において世界をリードする機関の1つだ。「国際的に有名な大学として、EU圏外からの応募者が多数いるが、すべてがフライブルクに来ることはできないし、希望するわけでもない。現地での試験、ビデオ録画による試験、ビデオ会議、およびピアニストの場合はディスクラビアによる試験という選択肢を用意した」とピアノ科教授でこの研究と入試の責任者であるクリストフ・シシュカ氏は述べている。


この遠隔試験のために上海と東京に設置された入試会場はヤマハがサポートし、映像の送信も同時に行われたとのこと。シシュカ教授のインタビュー、ならびに中国人受験生の演奏(ショパンのエチュード作品10-1)はSWR2上で聞ける。受験生たちはこの機会にとても満足していたとのこと。


フライブルク音大では、1904年に再生ピアノを製造したWelte-Mignon社のもとで記録された過去の大ピアニストたちの演奏(ピアノロール)をディスクラヴィアに転送・再生し、レッスンに活用しているらしい。なんと新しい・・・いや、古いのか(?)。なんとなく美空ひばりのAIロボットを思い出さないではないが、一個人としてとても興味のある試みである。


なお、コロナ収束後もディスクラビアによる入学試験がフライブルク音楽大学で引き続き選択肢となるかどうかは未定とのこと。次回の入試時期(2021年1月)には普通に受験できる環境が戻っていてほしいものだ。

ドイツの音楽大学 2020年夏ゼメスター実施予定の入学試験を延期・オンライン審査に変更、または中止

コロナ危機に伴い、ドイツの音楽大学では2020年夏ゼメスター期間中(通常は6月)に実施予定の入学試験の実施方法・時期が変更された。ざっと確認したところ、



●7月〜9月に延期 ミュンヘン音大ハンブルク音大マインツ音大ミュンスター音大
●10月に延期・一部オンライン審査 ハノーファー音大
●オンライン審査のみで実施 ベルリン芸大ロストック音大ブレーメン芸大ヴュルツブルク音大
●オンライン一次審査のあと二次審査として通常の試験 ベルリン・ハンス・アイスラー音大ドレスデン音大フランクフルト音大カールスルーエ音大トロッシンゲン音大
…等々(リンク先は各大学の入試情報ページ)。


何らかの形で実施する大学が大半を占めているが、各大学で対応にばらつきがあり、まちまちな印象。デトモルト音大などはどうやら入試自体を中止し代替案はない模様。明確な情報が公開されていない大学もあるので全てをチェックすることはできなかったが、受験生には大学側から個別に変更の連絡が入っていることだろう。ちなみにオンライン審査とは、受験生があらかじめ収録した演奏の録画(ビデオ)を提出し、それを試験官が審査するというもの。

 
コロナ・パンデミック下の現在、できるものは全てインターネット上でせざるを得ないとはいえ、音楽・芸術分野というのは『実技』が物を言う世界。ワルシャワのショパン国際ピアノコンクールなど、世界的なコンクールが開催延期を決める中、入試を完全デジタル化した音大が(一部ではあるが)存在することは驚きだ。筆者の勤務先であるロストック音大もその一つだが、最先端を走る大学だと喜んで良いのかは微妙なところである。受験生、特に日本やその他諸国から留学を希望する人たちにとって、大きな不安要素ではないだろうか。


そもそも海外留学に向けて準備をすること、大学で通常形態の授業を受けること自体が困難ないま。異国の地ですでに勉強を始めている人たち、またはこれからチャレンジしようとする人たちにはどうかへこたれず頑張ってほしい。何かしら役立つ情報などあればここでお知らせしたいと思う。

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